仕事を休んだ

この三連休、家族が旅行に出掛けており、家に残された私は1人で自由気ままに過ごしていた。

パソコンをつけっぱなしにしてBGMを流しながら絵を描いたり、ろくな栄養を取らなかったり、かと思えばジムで運動した後に確実に消費カロリーを上回るであろう食事(とってもジューシーなハンバーグ)を取ったり。

とにかく、珍しく1人で過ごせる休日を満喫していた。

 

ただ、休日は時間の経過が早い。あっという間に最終日の夜になった。明日は仕事だ、と憂鬱な気持ちでベッドに入った。今の仕事内容で特に大きな悩みはないのだが、無条件に行きたくないのが仕事というものだ。いや、無条件は嘘だ。他人に気を遣うのが嫌いだから行きたくないんだ。

あー嫌だ、あー嫌だと半泣きになりながら、いつもより少し遅く眠りについた。

 

 

朝5時40分。携帯のアラームが鳴る。

音に驚いたのか仕事が嫌すぎるのか、大きな鼓動がバクバクと寝起きの体に響く。

なんとか起き上がり、ルーチンワーク的に朝の準備に入る。

白米を頬張りながら、4日ぶりに点けたテレビを眺めていると、ふと「今日、会社休んじゃおかな」と思い立った。この時点で6時30分くらい。

そこから先、私の頭は「仕事を休む」ことでいっぱいになった。

6時50分。今から化粧と着替えと髪の毛を整えるんじゃあもう間に合わない。あーもう知らない。ツイッターしよ。

空いた茶碗を放置してスマホをいじっているうちに、いつも家を出る7時18分が過ぎていた。

 

やったあ、休みだ。

 

すさまじい解放感。

会社に欠勤メールを送って、ふだん時間の関係で観られない、グッドモーニングのデータ放送でクイズに答えるコーナーに参加した。正解したので3ポイントゲットした。

 

始業時間が過ぎてから、電話でも連絡を入れた。体調が悪い振りをしたつもりだが、声に嬉しさが表れてしまった気もする。でもふだんからニヤニヤ喋りだし大丈夫かな。

電話が済んで、こみあげる気持ちが抑えきれず部屋じゅうをウロウロ歩き回った。

 

こんなに最高なのか。会社をズル休みするというのは。

 

手前味噌だが、私は昔から真面目だ。親からも友人からも「まじめだねえ」と言われて育ってきた。そんな私はもちろん、(学生時代はともかく)仕事をズル休みなんてしたことがなかった(多少なりとも責任があるから)。なんならここ半年くらい無遅刻無欠勤だった。

 

その私が今日、ズル休みしてやった。

 

同僚に迷惑をかけることは間違いないので申し訳なさは多少あるものの、嬉しくて仕方なかった。

 

今日の自分は無敵だ。なんだってしていいんだ。何をしよう。

 

ウキウキしながら、パソコンを起動して脱出ゲームをプレイしまくった。1つもクリアできなかったが、はちゃめちゃに楽しい。時計に目をやっては、あぁ今昼休みだな、あぁ今あの作業の時間かな、と、今日だけは無関係のオフィスに思いを馳せながら、画面の中のクッションを裏返しまくった。

昼ごはんにどん兵衛を食べ、その後ラジオを聴きながら昼寝した。

1時間くらいで起きて、準備して、15時半くらいから19時くらいまで外出した。

オフィスカジュアルが強いられている職場では決して着ることのできない、ラフなパーカーと真緑のプリーツスカートを着て歩く。

ふだん通勤時に通る商店街に活気を感じる。行きはまだ空いていないし帰りはもう閉まっている八百屋や床屋に、煌々と照明が灯っている。

すいている電車にのんびり揺られる。電車の中では眠ることが多いが、今日は興奮で寝られなかった。

到着駅でお金を下ろした。いつも外に出られる時間帯はATM手数料が掛かるので、平日にお金を下ろすなんて本当に久しぶりだった(お金が必要な時は家族に代わりに下ろしてもらっている)。

夕方の喫茶店でジャムトーストをかじる。心がたちまち満たされていく。外はあいにくの雨模様だが、そんなのまったく関係なかった。

 

店を出て、帰路につく。

これ以上なく良い休日になった。満たされるとはこういうことか。

 

他人が働いてる間に遊ぶ(これを俗にサボると言う)快感は、他のものに代えることはできない。淡白な色使いのオフィスを思い出すたび、鮮やかに色づいた自分の心がその光景をかき消す。私は今、誰にも見られず最高の「休日」を過ごしているんだ。ズル休みという汚い現実が、私の心をキラキラと照らす。

おい、昔の私。こっちの私は平気で仕事を休む大人になったぞ。

 

あ〜〜ズル休み最高。

まじめなみんなもたまにはズル休みした方がいいよ。最高だから。最高〜〜〜

 

 

でも、ちょっとやっぱり、罪悪感は残る。

明日頑張って、それで償おう。